大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所 昭和60年(ワ)2578号 判決 1987年12月08日

反訴原告

都地純一

ほか一名

反訴被告

株式会社ゴール

ほか一名

主文

一  原告らの被告らに対する請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは連帯して原告都地純一に対し、五〇九万七九一〇円及びうち四六九万七九一〇円に対する昭和六〇年二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告らは連帯して原告都地由美子に対し、四六五万〇一六〇円及びうち四二五万〇一六〇円に対する昭和六〇年二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

昭和六〇年二月二五日午後一時三〇分ころ、福岡市博多区博多駅南二丁目一番所在の駅東三丁目バス停留所前の道路上で、被告亀川運転の普通貨物自動車(大阪四六み一九三三、以下「被告車」という。)が原告都地純一運転・原告都地由美子同乗の軽四輪乗用自動車(福岡五〇き五三二七、以下「原告車」という。)に追突した。

2  責任原因

(一) 被告会社は、右事故当時、被告車を自己のために運行の用に供していた。

(二) 被告亀川は、右事故の発生について前方注視義務違反の過失があつた。

3  損害

(一) 原告都地純一の損害

(1) 原告都地純一は、右事故によりむち打ち損傷の傷害を受け、その治療のため、笠原医院に昭和六〇年三月四日から同年六月一〇日までの九九日間入院し、同年二月二五日から同年八月六日までの間に二二回通院した。

(2) 右損害の内訳は次のとおりである。

(ア) 治療費 一一七万三八三〇円

(イ) 入院雑費 九万九〇〇〇円

一日一〇〇〇円の割合による九九日分

(ウ) 通院交通費 二万五〇八〇円

一回一一四〇円の割合による二二回分

(エ) 休業損害 二四〇万円

月収六〇万円の割合による休業期間四か月分

(オ) 慰謝料 一〇〇万円

(カ) 弁護士費用 四〇万円

(二) 原告都地由美子の損害

(1) 原告都地由美子は、右事故によりむち打ち損傷の傷害を受け、その治療のため、笠原医院に昭和六〇年三月一二日から同年六月一〇日までの九一日間入院し、同年二月二五日から同年八月六日までの間に二九回通院した。

(2) 右損害の内訳は次のとおりである。

(ア) 治療費 一一四万二一〇〇円

(イ) 入院雑費 九万一〇〇〇円

一日一〇〇〇円の割合による九一日分

(ウ) 通院交通費 三万三〇六〇円

一回一一四〇円の割合による二九回分

(エ) 休業損害 一九八万四〇〇〇円

月収四九万六〇〇〇円の割合による休業期間四か月分

(オ) 慰謝料 一〇〇万円

(カ) 弁護士費用 四〇万円

よつて、被告会社に対し、自賠法三条の規定に基づき、被告亀川に対し、民法七〇九条の規定に基づき、原告都地純一は、損害賠償金五〇九万七九一〇円及びうち弁護士費用を除く四六九万七九一〇円に対する損害発生の日である昭和六〇年二月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、原告都地由美子は、損害賠償金四六五万〇一六〇円及びうち弁護士費用を除く四二五万〇一六〇円に対する前同様の遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1(事故の発生)の事実は認める。

2  同2(責任原因)の(一)(運行供用者)の事実は認める(被告会社)。(二)(過失)の事実は認める(被告亀川)。

3  同3(損害)の(一)(原告都地純一の損害)の(1)(傷害)のうち入通院の事実は認めるが、傷害の点は否認する。(2)(損害の内訳)の事実はすべて争う。

(二)(原告都地由美子の損害)の(1)(傷害)のうち入通院の事実は認めるが、傷害の点は否認する。(2)(損害の内訳)の事実はすべて争う。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の証拠関係目録記載のとおりである。

理由

一  事故の発生

請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二  責任原因

1  請求原因2の(一)(運行供用者)の事実は、原告らと被告会社との間で争いがない。

2  同2の(二)(過失)の事実は、原告らと被告亀川との関係で争いがない。

三  損害

1  請求原因3の(一)(原告都地純一の損害)の(1)(傷害)のうち入通院の事実は、同原告と被告らとの間で争いがなく、同(二)(原告都地由美子の損害)の(1)(傷害)のうち入通院の事実は、同原告と被告らとの間で争いがない。

2  そこで、右追突による衝撃により原告らがその主張に係るむち打ち損傷の傷害を負つたかどうかについて判断する。

(一)  原告らの身分関係、病歴等

(1) 成立に争いのない甲第一七号証及び原告両名の各本人尋問の結果(いずれも第一、二回)によれば、原告両名は、昭和四七年一一月一五日結婚し、昭和五四年一〇月三一日、原告都地純一経営の運送会社の倒産に伴い、偽装の協議離婚をし、本件事故後である昭和六二年五月二七日再び結婚したこと、原告両名は、現在金融業を営む有限会社都商事などの会社を経営していることが認められる。

(2) 成立に争いのない甲第一一号証の一、第一二号証の一ないし三、第一三号証の一、第一五号証の一、第一六号証、原本の存在及び成立に争いのない甲第一一号証の二ないし三四、第一三号証の二ないし一三、第一四号証の一ないし三九、第一五号証の二ないし一六によれば、原告都地純一は、糖尿病及び高尿酸血症の病名の下に、<ア>昭和五四年一〇月四日から昭和五五年三月四日まで秦病院に、<イ>昭和五五年一〇月二八日から昭和五六年五月一六日まで笠原病院(本件に係る前記笠原医院の経営者笠原が共同経営をしていた病院)に、<ウ>昭和五七年二月一六日から昭和五七年七月二〇日まで本件に係る前記笠原医院に、<エ>昭和五八年二月二四日から同年七月一一日まで同病院に、<オ>昭和五九年四月九日から同年七月一六日まで同病院に、それぞれ入院したこと、これより先、同原告は、日本生命、千代田生命、安田生命及び朝日生命の各保険相互会社との間に、災害及び成人病等による入院について一定額の保険給付を受ける旨の特約を付した各種保険契約を締結しており、右<ア>ないし<オ>の五回にわたる入院により、右四社から合計一億円を超える保険金給付を受けたこと、他方、原告都地由美子は、大腸過敏症等の病名の下に、<カ>昭和五六年一〇月二八日から昭和五七年三月一九日まで前記笠原病院に、<キ>昭和五七年四月一〇日から同年五月一一日まで同医院に、それぞれ入院したこと、そして、同原告も、原告都地純一と同じように、日本生命及び安田生命との間に、前同様の保険契約を締結していたことから、右<カ>及び<キ>の入院により、右二社から合計三〇〇万円を超える保険金給付を受けたことが認められる。

(3) また、前掲各証拠によれば、本件事故に係る前記入院に際しても、原告都地純一は、前記四社から合計七九二万円の入院保険金給付を受け、原告都地由美子は、前記二社から合計一八七万円の同給付を受けたことが認められる。

(二)  治療状況

(1) 証人笠原の証言により真正に成立したものと認められる乙第一四号証、右証言及び原告ら各本人尋問の結果(いずれも第二回)によれば、笠原医院こと笠原は、内科の医師であつて、追突事故により通常生ずる傷害を治療する専門医ではなく、原告らは、そのことを十分承知しながら、しかも、笠原医院が事故現場からも原告らの住居地からも相当遠く離れているにもかかわらず、当初から殊更同医院における治療を求めたこと、そして、原告らは、同医院において個室に入院し、原告都地純一は、九九日間に及ぶ入院中一一回外泊し、原告都地由美子は、同じく九一日間の入院中一二回外泊しており、そのうち九回はそろつて外泊していることが認められ、原告らが同じ日に同医院を通院し、同じ日に同医院への通院をやめたことは、前記のとおりである。

(2) また、前掲乙第一四号証、証人笠原の証言により真正に成立したものと認められる乙第二ないし第九号証及び右証言によれば、前記入院当時、原告らは、頭痛や頸部痛を訴えていたが、他覚所見はなかつたこと、原告らは、入院中、鎮痛剤等の投薬及び静脈注射を受け、かつ、介達牽引等の物理療法を受けたにすぎず、その治療内容は通院時のそれと大同小異であつたことが認められる。

なお、笠原医院における治療費は、前掲乙第四、第五号証、第八、第九号証によれば、原告都地純一のそれが合計一一七万三八三〇円、原告都地由美子のそれが合計一一四万二一〇〇円であることが認められる。

(三)  事故状況

成立に争いのない甲第一ないし第六号証、被告亀川本人尋問の結果によれば、本件事故は、被告亀川において、被告車を運転中、先行車である原告車が更に先行する車両に続いて停止する態勢に入つたのに気付くのが遅れたことによつて発生した事故であるが、被告車は、追突とほとんど同時にそのままの状態で停止したこと、右衝突の衝撃により、被告車の前部バンパー(金属性)にはわずかな損傷が生じたが、原告車は、バンパー(合成樹脂製と思われる。)の損傷もなかつたことが認められ、右認定に反する原告ら各本人尋問の結果(いずれも第一回)は採用しない。

(四)  刑事処分

成立に争いのない甲第七号証によれば、被告亀川は、本件事故について、業務上過失傷害事件としてではなく、安全運転義務に違反したとして、道路交通法七〇条、一一九条一項九号の規定に基づき、昭和六〇年五月九日、罰金一万円に処せられたことが認められる。

(五)  事実関係は以上のとおりであつて、右(三)の事実によると、本件追突事故による衝撃は軽微であつたとみられ、この程度の衝撃では、特段の事情がない限り、追突された車両の運転手等に傷害を負わせる危険はないものと推認される(証人吉川泰輔の証言及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第八号証によれば、社団法人自動車保険料率算定会の登録鑑定人である吉川鑑定事務所こと吉川泰輔の意見も同旨であり、「本件事故によつて原告車に搭乗中の乗員が鞭打ち症になる可能性は考えにくい」としている。)ところ、本件においては、右特段の事情を認めるに足りる証拠はなく、むしろ、右(一)、(二)の認定事実によると、原告らは、その主観的な判断により、なじみの医師を利用して、自ら入通院の途を選んだ疑いがあるといわざるを得ない。

もとより、証人笠原及び原告ら本人は、右疑問を否定する供述をしているが、右供述は、前記認定事実に照らして、にわかに信用することができない。また、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第一八、第一九号証及び原告都地由美子本人尋問の結果によれば、同原告は、本件事故後の前記入院中、体重が相当減少したため、前記安田生命の嘱託医の診察を受けたが、「通常の生化学検査を含む血液、尿検査において特記すべき異常所見は認められない。」と診断されたことが認められる。しかし、右検査についてはその内容の詳細が明らかでない上、同原告は、前記のとおり、大腸過敏症等によりかつて長期間入院治療を受けた経験があり、右事実に照らしてみると、本件事故後同原告の体重が減少したからといつて、これをもつて同原告が本件事故によりむち打ち損傷の傷害を受けたことを推認するに足りる特段の事情があると判断することはできない。

四  結論

以上のとおりであつて、原告らの本訴請求は、その余を判断するまでもなく、失当であるから、いずれもこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 小長光馨一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例